韓国専門のトラベルコンシェルジュとして、現地で培った視点からK-POPの奥深さをお届けしています。今回は、「ミニアルバムって何?」「どう選べばいいの?」と戸惑っているK-POP初心者さんに向けて、アルバムの種類や魅力、後悔しない選び方までを丁寧に解説しました。ミニアルバムは、ただのCDではなく、アーティストの世界観が詰まった宝箱。この記事がその扉を開ける鍵となれば嬉しいです。
この記事のポイント
- 地元民が愛すソウルの本物の味を体験
- 定番グルメこそ専門店で味わうのが正解
- 乙支路や市庁など穴場エリアに名店あり
- 人気店はランチやディナーの時間をずらす
- B級グルメの宝庫、広蔵市場は必訪スポット
こんにちは!韓国専門トラベルコンシェルジュの彩音です。
学生時代からバックパック一つでアジアを旅してきましたが、今ではすっかり韓国の魅力、特にその「食」の奥深さの虜になっています。
ガイドブックに載っている有名店ももちろん素敵ですが、「本当に美味しいお店、知りませんか?」と尋ねられた時、私の胸が一番高鳴るのは、ソウルの地元の人たちが普段着で通う、活気に満ちた食堂を思い浮かべる瞬間なんです。
今回は、そんな私のとっておきのリストの中から、観光客向けのお店ではなく、ソウルの人々が心から愛し、日常的に通う人気の食堂を厳選してご紹介します。この記事を読めば、あなたもきっと、ソウルの街角で地元の人に混じって「本物の味」を堪能している自分を想像してしまうはず。さあ、一緒に美味しい旅に出かけましょう!
ソウルで地元人に愛される人気の食堂【定番グルメ編】
- 長年通うファン多数のサムギョプサル専門店
- 深い味わいが体に染みるソルロンタンの名店
- ピリ辛スープがやみつきになるタッカンマリ
- オフィス街のランチで定番のチゲ専門店
- 手打ち麺のコシが違うカルグクスの老舗
- ボリューム満点で満足度の高いプデチゲ
- 新鮮な海鮮が味わえるヘムルタン
- 秘伝のタレが決め手のカンジャンケジャン
ソウル旅行の醍醐味といえば、やはり美味しい韓国料理ですよね。サムギョプサルやチゲ、ソルロンタンなど、日本でもおなじみのメニューがたくさんあります。ですが、定番だからこそ、お店選びでその満足度は大きく変わるもの。地元の人たちは、どんなお店を「本物」として選んでいるのでしょうか。
ここでは、数ある食堂の中から、長年通う常連客の舌を唸らせ続ける「定番グルメ」の名店をご紹介します。観光客向けのきらびやかなお店とは一味違う、生活に溶け込んだ本物の味。その扉を開けば、きっと忘れられない食体験があなたを待っていますよ。
まずは、韓国焼肉の王様から見ていきましょう。
長年通うファン多数のサムギョプサル専門店
韓国料理と聞いて、多くの方が真っ先に思い浮かべるのがサムギョプサルではないでしょうか。豚の三枚肉を鉄板でジューシーに焼き上げ、サンチュやエゴマの葉で巻いていただく、あの幸せな時間。ソウルには星の数ほどのサムギョプサル店がありますが、地元の人々が「ここのサムギョプサルじゃなきゃダメなんだ」と足しげく通うお店には、やはり特別な理由があります。
そうしたお店の多くは、派手な看板や最新のインテリアとは無縁です。むしろ、少し年季の入った店構えで、中に入ると仕事帰りの会社員グループや家族連れが、楽しそうな笑い声と共に煙をもうもうと立てている、そんな光景が広がっています。彼らのお目当ては、なんといってもその「肉質」。一般的なお店で提供される薄切りの冷凍肉とは一線を画す、厚切りの生サムギョプサルが基本です。鉄板の上でじっくりと熱が通され、表面はカリッと、中は驚くほどジューシーに仕上がった豚肉は、一口噛むと肉の甘い脂がじゅわっと口の中に広がります。
私が特に感動したのは、ある老舗で食べた「モクサル(豚の首周りの肉)」でした。サムギョプサルと一緒に注文するのが地元流なのですが、赤身と脂のバランスが絶妙で、まるで上質なステーキを食べているかのような満足感。お店のアジュンマ(おばさん)が手際よく焼いてくれながら、「うちのはね、肉がいいから塩だけで食べてみな」と教えてくれた通りに口に運ぶと、本当に肉本来の旨味だけで十分に美味しくて。思い出すだけで、またあの味を求めてソウルへ飛びたくなります。
こうした専門店では、付け合わせのキムチやナムル、特製のタレにも一切の妥協がありません。特に、鉄板で豚の脂と一緒に焼く古漬けキムチ(ムグンジ)は、酸味と旨味が凝縮されていて、これだけでご飯が何杯でもいけてしまうほどの絶品です。
一つ注意点を挙げるとすれば、人気店は夕方の早い時間から満席になることが多いこと。予約を受け付けていないお店も少なくないので、少し早めの時間帯を狙うか、行列を覚悟で行くのがおすすめです。でも、その待ち時間さえも、美味しいサムギョプサルへの期待感を高めるスパイスになるはずですよ。
さて、香ばしい焼肉でお腹を満たした後は、体の芯からじんわりと温まる、優しいスープの世界へご案内しましょう。
深い味わいが体に染みるソルロンタンの名店
ソウルの朝、特に少し肌寒い日や、前の晩に少しお酒を飲みすぎたかな、なんていう日の朝食に、地元の人々がこぞって足を運ぶ場所があります。それが、ソルロンタンの専門店です。ソルロンタンとは、牛の骨や肉、内臓などを長時間じっくりと煮込んで作る、白濁したスープのこと。見た目はとてもシンプルですが、その一杯には牛の旨味がこれでもかと凝縮されています。
観光客向けのエリアにもソルロンタンのお店はありますが、地元で本当に愛されているお店は、メニューが「ソルロンタン」と「スユク(茹で豚)」の二つだけ、といった潔いスタイルであることが多いです。私が初めてソウルの友人に連れて行ってもらったお店も、まさにそんな場所でした。朝早くから開いている店内は、出勤前のサラリーマンや、近所のおじいさんたちでほぼ満席。みんな、黙々と白いスープに向き合っています。
運ばれてきたソルロンタンは、一見するとただの白いスープ。味付けはほとんどされていません。テーブルに置かれた塩、コショウ、そしてたっぷりの刻みネギを自分で加えて、好みの味に仕上げていくのが本場流。友人に「まずはスープをそのまま一口飲んでみて」と言われ、恐る恐るレンゲですくって口にすると、その滋味深く、まろやかな味わいに思わず「はぁ〜」とため息が漏れました。余計なものが一切ない、純粋な牛の旨味が、疲れた体にじんわりと染み渡っていくような感覚。これこそが、地元の人々が毎日でも食べたくなる理由なのだと直感しました。
そこからが本番です。塩を少しずつ加えて味を調え、刻みネギをどっさりと投入。そして、忘れてはならないのが、カクテキ(大根のキムチ)です。ソルロンタンの名店は、カクテキが美味しいことでも知られています。よく熟成されたカクテキの酸味と辛味が、まろやかなスープの絶妙なアクセントになるのです。スープにご飯を入れ、カクテキを乗せて一緒に食べるのが定番のスタイル。この組み合わせが、本当に最高なんです。
もしあなたがソウルで朝食に迷ったら、ぜひソルロンタンの名店を訪れてみてください。派手さはありませんが、心と体を優しく満たしてくれる、忘れられない一杯に出会えるはずです。ただし、人気店はランチタイムには行列必至なので、朝の早い時間帯が狙い目ですよ。
優しいスープで心も体もリセットされたところで、次にご紹介するのは、もう少し刺激的で、みんなでわいわい楽しみたい、そんな気分の日にぴったりの鍋料理です。
ピリ辛スープがやみつきになるタッカンマリ
「タッカンマリ」という料理をご存知でしょうか?直訳すると「鶏一羽」。その名の通り、鶏を丸ごと一羽、大きな鍋で豪快に煮込んで食べる、ソウルの名物料理です。特に、東大門市場の近くには「タッカンマリ横丁」と呼ばれる通りがあり、そこには数多くの専門店が軒を連ね、夜になると地元の人たちで大変な賑わいを見せます。
私が初めてタッカンマリを食べた時の衝撃は、今でも忘れられません。テーブルに運ばれてきたのは、洗面器のような大きな鍋。その中には、鶏が丸ごと一羽、ネギやジャガイモ、トッポギ(韓国のお餅)と一緒に、透き通ったスープの中でぐつぐつと煮えています。お店のアジュンマが大きなハサミで鶏を手際よくジョキジョキと解体していく様子は、まさに圧巻の一言。そのライブ感も、タッカンマリの楽しみの一つです。
スープ自体は、鶏のダシが効いた優しい味わい。しかし、タッカンマリの真骨頂はここからです。テーブルに置かれたタデギ(唐辛子味噌)、醤油、お酢、からし、そして刻みニンニク。これらを自分好みにブレンドして、オリジナルのつけダレを作るのです。このタレ作りが、本当に楽しい!友人と「私はニンニク多め」「からしを効かせるのが好き」なんて言いながら、自分だけの黄金比を見つけ出します。
十分に煮込まれてホロホロになった鶏肉を、その特製ダレにたっぷりとつけて口に運ぶと…、もう、言葉になりません。鶏の旨味とピリ辛のタレが一体となって、最高のハーモニーを奏でます。ジャガイモはホクホク、トッポギはもちもち。夢中で食べ進めてしまいます。
そして、締めくくりは「カルグクス(韓国風うどん)」。鶏の旨味が凝縮されたスープに麺を投入し、最後の最後までその美味しさを味わい尽くすのがお決まりのコースです。この締めがあるから、タッカンマリはやめられないんですよね。
注意点としては、基本的には2人前以上からの注文となるお店がほとんどなので、一人旅の方には少しハードルが高いかもしれません。ただ、最近では一人用のメニューを用意しているお店も増えてきているようです。また、タッカンマリ横丁のお店はどこも活気があって少し騒がしいので、静かに食事を楽しみたい方には向かないかもしれませんが、その賑わいこそがソウルのエネルギー。ぜひ、仲間とわいわい言いながら、熱々の鍋を囲んでみてください。
さて、グループで楽しむ鍋料理の次は、一人でも気軽に立ち寄れる、韓国人の日常に欠かせないあの料理をご紹介します。
オフィス街のランチで定番のチゲ専門店
ソウルのオフィス街を平日のランチタイムに歩いていると、スーツ姿の会社員たちが足早に吸い込まれていく食堂があります。彼らのお目当ては、ずばり「チゲ」。キムチチゲやテンジャンチゲ(韓国味噌チゲ)、スンドゥブチゲ(純豆腐チゲ)など、熱々のチゲとご飯は、韓国の人々にとって日本の味噌汁とご飯のような、あるいはそれ以上に欠かせないソウルフードです。
観光客向けのレストランで食べるチゲも美味しいですが、地元の人々が日常的に通うチゲ専門店には、また違った魅力があります。それは、「深み」と「実直さ」。何十年も同じ場所で、ただひたすらに美味しいチゲを作り続けてきた、そんな歴史を感じさせるお店が多いのです。メニューは数種類のチゲといくつかのサイドメニューのみ。内装も飾り気がなく、テーブルと椅子が並んでいるだけ。しかし、扉を開けた瞬間にふわっと香るダシと発酵食品の匂いが、美味しい食事を約束してくれます。
私が特に好きなのは、古いキムチを豚肉と一緒に煮込んだ「キムチチゲ」。ある市庁エリアの路地裏にある専門店で食べたキムチチゲは、まさに衝撃的な美味しさでした。一口食べると、まず感じるのはキムチの深い酸味とコク。これは、家庭ではなかなか出せない、長年継ぎ足してきた秘伝の味なのでしょう。そして、ゴロゴロと入った豚肉は驚くほど柔らかく、辛さの中にも確かな甘みと旨味を感じます。熱々のご飯に、このチゲを少しずつかけながら食べるのが最高なんです。周りを見渡せば、地元のサラリーマンたちも皆、同じように夢中でご飯をかきこんでいます。その光景を見ているだけで、なんだか自分もソウル市民の一員になれたような、嬉しい気持ちになります。
こうしたお店では、チゲを注文すると数種類のパンチャン(おかず)が無料で付いてくるのも魅力の一つ。もやしのナムルや韓国のり、卵焼きなど、お店によって内容は様々ですが、どれもご飯が進むものばかり。チゲが来るまでの間にパンチャンをつまみながら待つのも、楽しい時間です。
一つ覚えておくと良いのは、こうしたランチの定番店は、12時から13時の間は非常に混雑するということ。少し時間をずらして13時過ぎに訪れると、比較的スムーズに入店できることが多いです。一人でも気兼ねなく入れるお店がほとんどなので、一人旅の方にも心からおすすめします。
熱々のチゲで心も体も燃え上がった後は、今度はスープと麺が織りなす、優しくも奥深い味わいの世界にご案内します。
手打ち麺のコシが違うカルグクスの老舗
チゲと並んで、韓国の人々に深く愛されている日常食が「カルグクス」です。カルグクスとは、手打ちの平たい麺を、アサリや煮干し、鶏などでとった温かいスープでいただく、韓国式のうどんのような料理。素朴ながらも、その店の個性やこだわりがスープと麺に凝縮されており、知れば知るほど奥深い世界が広がっています。
特に、地元で「美味しい」と評判のカルグクス店は、決まって麺に強いこだわりを持っています。店先で職人さんが麺を打っている姿を見かけることも珍しくありません。機械製麺にはない、不揃いながらも力強いコシと、もちもちとした食感。この麺をすするだけでも、そのお店を訪れる価値があると思えるほどです。
私がソウルで最も心に残っているカルグクスの一つは、鍾路(チョンノ)の古い市場の片隅にある、小さな老舗のものです。初めて訪れた時、その佇まいに少し気圧されながらも勇気を出して入ってみると、店内は地元のお客さんでいっぱいでした。メニューはカルグクスとマンドゥ(餃子)だけ。アサリがたっぷり入ったカルグクスを注文すると、大きな器になみなみと注がれた、少し白濁したスープが登場しました。一口すすると、アサリの濃厚な旨味とニンニクの風味が口いっぱいに広がります。そして、主役の麺。これが本当に絶品で、つるつるとした喉越しと、噛むほどに感じる小麦の甘み。夢中で麺をすすり、スープを飲み干してしまいました。
カルグクスを食べる上で欠かせない名脇役が、キムチです。カルグクスの名店は、キムチが美味しいことでも有名。しかも、一般的な白菜キムチとは少し違い、ニンニクと唐辛子がガツンと効いた、フレッシュで浅漬けタイプの「コッチョリ」を提供するところが多いのが特徴です。このパワフルなキムチが、優しい味わいのカルグクスと驚くほどよく合います。カルグクスを一口、キムチを一口、と交互に食べるのが最高の楽しみ方。あまりの美味しさに、ついついキムチをおかわりしてしまいます。
注意点として、人気店、特に明洞餃子のような超有名店は常に行列ができていますが、回転が早いので見た目ほど待たないことも多いです。また、量が非常に多いお店もあるので、女性の方は注文時に「量を少なめに」とお願いするのも良いかもしれません。心温まる一杯を求めるなら、ぜひカルグクスの老舗を訪ねてみてください。
さて、優しい麺料理の次は、もう少しジャンクで、様々な具材が渾然一体となった、中毒性の高いあの鍋料理の世界へご案内しましょう。
ボリューム満点で満足度の高いプデチゲ
数ある韓国の鍋料理の中でも、特に若者や男性グループから絶大な支持を集めているのが「プデチゲ」です。プデとは「部隊」という意味で、その名の通り、朝鮮戦争後に米軍基地から流れてきたソーセージやスパム、ベーコンなどを、キムチや野菜と一緒に辛いスープで煮込んだのが始まりとされています。まさに、韓国の歴史が生んだ、ジャンクでパワフルなソウルフードと言えるでしょう。
初めてプデチゲを食べる方は、その具材の組み合わせに驚くかもしれません。鍋の中には、ソーセージやスパムはもちろん、インスタントラーメンの麺、チーズ、豆腐、トッポギ(韓国餅)、そしてたっぷりの野菜がひしめき合っています。これらが真っ赤なスープの中でぐつぐつと煮える様子は、見ているだけで食欲が刺激されます。
地元で人気のプデチゲ専門店は、オフィス街のランチスポットとしても、夜に仲間と集まる場所としても大活躍しています。私がよく行く議政府(ウィジョンブ)発祥の有名チェーン店は、いつ訪れても活気に満ちています。スープの味が絶妙で、辛さの中にもしっかりとした旨味と、どこか懐かしいようなジャンクな美味しさがあるんです。友人たちと鍋を囲み、伸びないうちにラーメンの麺を急いで食べ、チーズがとろけたソーセージを頬張る…この一体感がたまりません。
プデチゲの楽しみは、なんといってもご飯との相性の良さ。多くの専門店では、ご飯が大きな器で提供されます。そのご飯に、具材とスープをたっぷりかけて、ビビンバのように混ぜながら食べるのが地元流。ソーセージの塩気、キムチの酸味、チーズのコク、そして辛いスープが白米に絡み合い、まさに至福の味わいです。
一つアドバイスをするとしたら、プデチゲはとにかくボリューム満点なので、注文する際は少し控えめな人数分から頼むのが賢明です。例えば3人で行くなら、まずは2人前を頼んでみて、足りなければラーメンや具材を追加(サリと呼びます)するのがおすすめ。また、スープが煮詰まって辛くなりすぎないように、火加減を調整することも美味しく食べるコツです。
安くて、美味しくて、お腹いっぱいになれる。プデチゲは、そんなソウルの人々のエネルギーの源ともいえる料理。その混沌とした美味しさの虜になってみませんか?
肉や加工肉が主役の料理が続きましたが、次はがらりと趣向を変えて、海の幸をふんだんに使った豪華な鍋料理をご紹介します。
新鮮な海鮮が味わえるヘムルタン
「ソウルは内陸にあるから、海産物はあまり期待できないのでは?」と思っている方がいたら、それは大きな誤解です。韓国は三方を海に囲まれた国。全国各地の港から、毎日新鮮な魚介類がソウルへと運ばれてきます。そんな新鮮な海の幸を心ゆくまで堪能できる料理が「ヘムルタン」。ヘムルは「海物」、タンは「鍋(スープ)」を意味し、文字通り、魚介類をふんだんに使った豪華な海鮮鍋です。
地元で評判のヘムルタン専門店に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、店の入口にずらりと並んだ大きな水槽。中ではアワビやホタテ、タコ、エビなどが元気に動き回っており、その鮮度の高さを物語っています。テーブルに運ばれてくるのは、山のようになった魚介類が乗った大きな鍋。ワタリガニ、イカ、タコ、エビ、アサリ、ムール貝など、季節によって内容は変わりますが、その種類の豊富さとボリュームには誰もが圧倒されるはずです。
私が麻浦(マポ)エリアの有名店でヘムルタンを注文した時のこと。鍋にはまだ生きているテナガダコが乗せられていて、火にかけるとグネグネと動き出し、思わず友人と声を上げてしまいました。そんなライブ感もヘムルタンの醍醐味の一つ。お店の人が手際よく魚介類を捌いてくれ、食べごろを教えてくれます。
スープは、コチュジャンベースの真っ赤なものが主流ですが、見た目ほど辛くはなく、魚介から染み出た旨味が凝縮されていて、とにかく深い味わい。一口飲むごとに、磯の香りが口いっぱいに広がります。新鮮な魚介はどれも身がぷりっぷりで、それぞれの素材の味をしっかりと感じることができます。特に、カニやエビの殻から出るダシは格別で、スープの味をどんどん奥深くしていきます。
ヘムルタンを楽しむ際の注意点としては、値段が少し張ることです。使われている魚介類が豪華なため、サムギョプサルやチゲに比べると高級な料理に分類されます。そのため、地元の人々にとっては、何かお祝い事があったり、特別な日に家族や仲間と集まって食べるご馳走、という位置づけです。また、二人前からというお店がほとんどなので、一人旅では少しハードルが高いかもしれません。
しかし、その値段以上の満足感が得られることは間違いありません。旅の思い出に、少し奮発して豪華な海鮮鍋を囲んでみるのはいかがでしょうか。締めには、残ったスープでポックンパ(焼き飯)を作るのが定番。魚介の旨味を吸い込んだご飯は、まさに絶品ですよ。
さて、豪華な鍋料理の次は、これまたご飯との相性が抜群で、「ご飯泥棒」の異名を持つ、あの甲殻類料理の名店にご案内します。
秘伝のタレが決め手のカンジャンケジャン
韓国料理の中でも、特に食通を唸らせる逸品として知られるのが「カンジャンケジャン」。生のワタリガニを、醤油ベースの特製ダレにじっくりと漬け込んだ料理です。そのとろけるような食感と濃厚な味わいは、一度食べたら忘れられないと評判で、「パプトドゥク(ご飯泥棒)」という愛称で呼ばれるほど、ご飯との相性が抜群なのです。
カンジャンケジャンのお店選びは非常に重要です。鮮度が命の料理なので、信頼できるお店でなければ、生臭さが気になってしまうことも。地元で長年愛されている専門店は、カニの仕入れから漬け込むタレまで、独自のこだわりを持っています。私がいつも訪れる新沙洞(シンサドン)の有名店は、ミシュランガイドにも掲載された実力派。店内はいつも、この味を求めてやってくる地元の人々と、噂を聞きつけた観光客で賑わっています。
テーブルに運ばれてきたカンジャンケジャンは、オレンジ色の内子(ネジャン)がたっぷりと詰まっていて、見るからに美味しそう。ビニールの手袋をはめ、甲羅を外し、脚の身をちゅーっと吸い出すようにして食べるのが基本スタイルです。口に入れた瞬間、カニの身がとろりと溶け、甘みと旨味が広がります。そして、それを追いかけるように、醤油ダレのしょっぱさとほのかな甘みがやってくる。生臭さなど全くなく、ただただ濃厚なカニの風味に酔いしれます。
そして、カンジャンケジャンのクライマックスは「甲羅ご飯」。残ったカニの甲羅にご飯を入れ、そこへカニ味噌と残ったタレをたっぷりとかけて、スプーンで混ぜていただくのです。これはもう、反則級の美味しさ。濃厚なカニ味噌とタレが染み込んだご飯は、まさに至福の味。誰もが黙々と甲羅にご飯を詰め、夢中でかきこんでしまいます。「ご飯泥棒」と呼ばれる所以を、身をもって体験する瞬間です。
注意点として、カンジャンケジャンはヘムルタン同様、比較的高価な料理です。ランチタイムに定食として手頃な価格で提供しているお店も多いので、まずはランチで試してみるのも良いでしょう。また、生ものですので、体調が万全の時に食べることをお勧めします。しかし、そのリスクを冒してでも食べる価値のある、唯一無二のグルメ体験がそこにはあります。
ここまで定番グルメの名店をご紹介してきましたが、ソウルの魅力はそれだけではありません。次は視点を変えて、特定の「エリア」に焦点を当ててみましょう。
ソウルの地元人が集う人気の食堂【穴場エリア編】
- レトロな路地裏に名店が潜む乙支路エリア
- ビジネスマンの胃袋を支える市庁エリア
- 若者で賑わう活気ある街弘大エリア
- 洗練された大人の街江南エリア
- おしゃれなカフェとグルメの聖水洞エリア
- 昔ながらの雰囲気が残る往十里エリア
- 学生に愛される安くて旨い店が多い新村エリア
- 伝統市場の活気を楽しむ広蔵市場エリア
ソウルという街は、本当に面白い場所です。地下鉄でほんの数駅移動するだけで、街の雰囲気や行き交う人々の層ががらりと変わります。そして、それは「食」の世界でも同じこと。それぞれのエリアには、その土地の歴史や文化を反映した、個性豊かな食堂が集まっています。
きらびやかな観光地から一歩足を踏み入れれば、そこには地元の人々のリアルな日常と、彼らの胃袋を支える隠れた名店の数々が待っています。ここからは、ガイドブックではあまり大きく取り上げられないけれど、食の魅力にあふれた「穴場エリア」を巡る旅にご案内しましょう。エリアごとの特徴を知れば、あなたのソウルグルメ探訪は、もっとディープで楽しいものになるはずですよ。
まずは、新しさと古さが不思議な同居を遂げた、あのエリアからスタートです。
レトロな路地裏に名店が潜む乙支路エリア
「ヒップ(Hip)」と「乙支路(ウルチロ)」を掛け合わせた「ヒプチロ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?近年、ソウルの若者やおしゃれな人々の間で、最も注目されているエリアの一つが、この乙支路です。元々は印刷所や工具店などが軒を連ねる下町工場地帯でしたが、その古い建物をリノベーションしたカフェやバー、レストランが次々とオープンし、新旧が入り混じる独特の雰囲気が人気を呼んでいます。
乙支路の食堂探しの魅力は、まるで宝探しのようなワクワク感にあります。大通りから一本入った細く薄暗い路地裏、本当にここにお店があるの?と不安になるような場所に、突如として行列のできる名店が現れるのです。看板も出ていないようなお店も多く、知る人ぞ知る、という雰囲気がたまりません。
私が友人に連れられて初めて乙支路の路地裏グルメを体験した時は、本当に驚きました。工具店の間にひっそりと佇む扉を開けると、中は仕事終わりのアジョシ(おじさん)達が、ノガリ(スケトウダラの干物)を肴にビールジョッキを傾ける、活気あふれる空間。外観とのギャップに、まるで異世界に迷い込んだかのような感覚を覚えました。炭火で炙られた香ばしいノガリと、キンキンに冷えた生ビールの組み合わせは、まさに最高の一言。周りの喧騒も心地よいBGMとなり、ソウルの夜にどっぷりと浸ることができました。
このエリアには、そうした昔ながらの居酒屋(ホプ)の他にも、豚の特殊部位を扱う焼肉店や、ピリ辛のゴルベンイ(つぶ貝)の和え物が名物の店など、お酒好きにはたまらないB級グルメの名店が隠されています。
ただし、乙支路を散策する上での注意点もあります。路地裏は本当に入り組んでいて、地図アプリだけではたどり着けないことも。また、夜は人通りが少なく暗い場所もあるので、特に女性の一人歩きには注意が必要です。しかし、その迷路のような路地を探検し、お目当てのお店を見つけ出した時の喜びは格別。勇気を出して、ディープなソウルの魅力に触れてみませんか?
レトロな乙支路の喧騒を後にしたら、次はすぐお隣、スーツ姿のビジネスマンたちが集う、ソウルの胃袋ともいえるエリアを覗いてみましょう。
ビジネスマンの胃袋を支える市庁エリア
ソウル市庁や大企業の高層ビルが立ち並ぶ市庁(シチョン)エリア。ここは、ソウルの心臓部ともいえるビジネス街です。平日のランチタイムになると、ビルから一斉に飛び出してきたビジネスマンたちで通りは埋め尽くされ、街全体が活気に包まれます。彼らの目的はただ一つ。「安くて、早くて、うまい」ランチです。
このエリアの食堂は、舌の肥えたビジネスマンたちを満足させるため、日々しのぎを削っています。そのため、味のレベルが非常に高く、それでいて価格はリーズナブルなお店が多いのが最大の特徴。観光客向けの派手さはありませんが、長年通う常連客に支えられた、実力派の老舗が数多く存在します。
私がこのエリアで忘れられないのは、ある寒い冬の日に食べたプゴクッ(干しダラのスープ)専門店の味です。朝早くから営業しているそのお店は、出勤前のサラリーマンで常に満席。メニューはプゴクッひとつだけ。席に着くと、何も言わなくても熱々のスープが運ばれてきます。白濁したスープは、見た目以上に深いコクがあり、干しダラの優しい旨味が冷えた体にじんわりと染み渡ります。ふわふわの豆腐と溶き卵も入っていて、栄養満点。テーブルに置かれたアミの塩辛で自分好みに味を調整しながら、ご飯と一緒に夢中でかきこみました。食べ終わる頃には、体はポカポカ。これで一日頑張れる、と背中を押してくれるような、そんな一杯でした。
市庁エリアには、このプゴクッのほかにも、チョッパル(豚足)やポッサム(茹で豚)が美味しいと評判の店、濃厚なコングクス(豆乳スープの冷たい麺)で有名な店など、一つのメニューを極めた専門店が点在しています。
市庁エリアを訪れる際のポイントは、やはり時間をずらすこと。平日の12時から13時は、どのお店も戦場のような混雑ぶりです。少し早めの11時半頃か、遅めの13時過ぎを狙うのが賢明でしょう。夜は、仕事終わりの一杯を楽しむ人々で賑わう居酒屋街へと姿を変えます。ビジネスマンたちの憩いの場で、彼らに混じって一杯傾ければ、あなたもソウルの日常に溶け込めるはずです。
さて、エネルギッシュなビジネス街の次は、がらりと雰囲気を変えて、若者たちのパワーとアートが溢れる、あの活気ある街へと向かってみましょう。
若者で賑わう活気ある街弘大エリア
ソウルのトレンド発信地といえば、多くの人が弘大(ホンデ)エリアを挙げるでしょう。美術大学の最高峰である弘益(ホンイク)大学を中心に広がるこの街は、いつも若者たちのエネルギーで満ち溢れています。ストリートではインディーズバンドの演奏が響き、壁にはアーティスティックなグラフィティが描かれ、個性的なファッションに身を包んだ若者たちが行き交う。そんな自由でクリエイティブな雰囲気が、弘大エリアの最大の魅力です。
この街のグルメシーンも、まさにその空気を反映しています。SNS映えする最新のスイーツ店やおしゃれなカフェが次々とオープンする一方で、学生たちの懐に優しい、安くてボリューム満点の老舗食堂もしっかりと根付いているのです。この新旧の多様性こそが、弘大グルメの面白さと言えるでしょう。
私が学生時代に韓国へ留学していた友人から聞いた話で印象的だったのは、彼が「青春の味」と呼んでいた、あるチーズトゥンカルビ(チーズと豚のバックリブ)のお店の話です。山のように盛られた甘辛い味付けのトゥンカルビの周りを、とろとろに溶けたチーズの川が囲んでいる。それを絡めて食べる背徳感と満足感は、若者にとって最高のご馳走だったと彼は言います。仲間たちと一つの鍋を囲み、将来の夢や他愛もない話で笑い合った時間は、料理の味と共に忘れられない思い出になっているそうです。
弘大には、こうしたガッツリ系のメニューの他にも、サムギョプサルの食べ放題で有名なお店や、独創的なフュージョン料理を提供するお店、深夜まで営業している屋台など、若者たちのあらゆるニーズに応える食堂が揃っています。
弘大エリアを楽しむ上でのアドバイスは、週末や平日の夜は非常に混雑することを覚悟しておくこと。特に人気店は、長い行列ができることも珍しくありません。また、人の多さに少し疲れてしまうこともあるかもしれません。そんな時は、メインストリートから少し外れた延南洞(ヨンナムドン)エリアまで足を延ばすのがおすすめです。こちらはもう少し落ち着いた雰囲気で、個性的な個人経営のカフェやレストランが点在しており、ゆったりと散策するのにぴったりですよ。
若者のエネルギーに満ちた弘大の次は、もう少し年齢層が上がり、洗練された大人の雰囲気が漂う、ソウルのもう一つの顔ともいえるエリアにご案内します。
洗練された大人の街江南エリア
PSYの世界的ヒット曲「江南スタイル」で一躍その名を知られるようになった江南(カンナム)エリア。高層ビルが林立し、高級ブランドのショップや美容クリニックが軒を連ねるこの街は、ソウルの中でも特に洗練され、富裕層が集まるイメージが強いかもしれません。確かに、きらびやかでスタイリッシュなレストランやバーが多いのは事実です。
しかし、「江南は高くて美味しいお店がない」というのは、この街をよく知らない人の思い込み。実は大通りから一本路地裏に入ると、長年この地で働く会社員たちの胃袋を満たし続けてきた、実力派の食堂が数多く隠れているのです。派手さはありませんが、味で勝負する本物の名店。それらを知っていることこそが、真のソウル通の証かもしれません。
私が江南で働いていた韓国人の友人から教えてもらったのは、まさにそんな路地裏にあるキムチチゲの専門店でした。外観はごく普通の食堂ですが、ランチタイムにはいつも近隣のオフィスワーカーで満席。ここのキムチチゲは、豚肉がゴロゴロと入っていて、しっかりと熟成させたキムチの酸味とコクが絶妙なバランス。そして、特筆すべきはラーメンサリ(追加のインスタント麺)が無料で、ご飯もおかわり自由だということ。物価の高い江南エリアにあって、このサービス精神は驚きです。友人曰く、「江南で疲れた時は、ここのチゲを食べないと元気が出ないんだ」とのこと。その言葉に、地元の人々からの絶大な信頼が感じられました。
江南エリアには、こうした庶民的な食堂の他にも、接待や会食で使われるような高級韓定食のお店や、クオリティの高い焼肉店も多く存在します。TPOに合わせてお店を選べる、懐の深さも江南の魅力の一つです。
注意点としては、エリアが非常に広いため、目的地のお店を事前にしっかりと地図で確認しておくことが大切です。地下鉄の駅からも少し歩くことが多いので、時間に余裕を持って行動することをおすすめします。きらびやかなイメージの裏に隠された、江南の実直な「食」の顔。そのギャップを発見するのも、旅の面白いところではないでしょうか。
さて、大人の街・江南の次は、元工場地帯がおしゃれなカルチャースポットへと生まれ変わった、今最もホットなエリアの一つへと足を運びましょう。
おしゃれなカフェとグルメの聖水洞エリア
「ソウルのブルックリン」とも称される聖水洞(ソンスドン)。かつては手製靴の工場や小さな町工場が立ち並ぶ工業地帯でしたが、近年、その古い建物をリノベーションしたユニークなカフェやギャラリー、セレクトショップが続々と誕生し、ソウルで最もヒップなエリアとして注目を集めています。レンガ造りの建物が残るノスタルジックな街並みと、現代的なアートやデザインが融合した独特の雰囲気が、多くの人々を惹きつけてやみません。
聖水洞といえば、まず思い浮かぶのはおしゃれなカフェ巡りかもしれません。巨大な倉庫を改造したカフェや、有名ブランドが手掛けるコンセプトストアなど、一軒一軒が個性的で、どこを切り取っても絵になります。しかし、この街の魅力はそれだけにとどまりません。元々この地で働いていた職人さんたちの胃袋を支えてきた、安くて美味しい老舗の食堂もしっかりと健在なのです。
私が特に印象に残っているのは、カムジャタン(豚の背骨とジャガイモを煮込んだ鍋)が名物の老舗食堂です。カフェ巡りの途中で偶然見つけたそのお店は、昼時を過ぎているにもかかわらず、地元の常連客らしき人々で賑わっていました。注文したカムジャタンは、大きな鍋にホロホロになるまで煮込まれた豚の背骨肉が山のように盛られ、そのビジュアルに圧倒されます。スープはエゴマの風味が効いていて、濃厚ながらもしつこくなく、深い旨味があります。骨についた肉をしゃぶりつきながら、シレギ(干した大根の葉)とスープをご飯にかけて食べるのが最高でした。周りのおしゃれなカフェの雰囲気とのギャップが、また面白い体験でした。
聖水洞では、この他にも行列のできるカルビ専門店や、手頃な価格で楽しめる豚焼肉の店など、新旧の実力派グルメが共存しています。
聖水洞を訪れる際のポイントは、歩きやすい靴で行くこと。エリアが広く、見どころが点在しているため、かなりの距離を歩くことになります。また、週末は特に混雑するので、人気のカフェやレストランは待ち時間を覚悟しておきましょう。最新のトレンドと、昔ながらの温かい人情が交差する街、聖水洞。その両方の魅力を、ぜひあなたの舌で味わってみてください。
おしゃれな聖水洞から少し移動して、次はもっと庶民的で、煙がもうもうと立ち込める、あのグルメ専門横丁があるエリアへご案内します。
昔ながらの雰囲気が残る往十里エリア
ソウルの中心部から少し東に位置する往十里(ワンシムニ)。ここは、きらびやかな観光地とは一線を画す、地元の人々の生活感が色濃く残るエリアです。駅前には大きな複合商業施設があり便利でありながら、一歩路地に入ると昔ながらの市場や商店が軒を連ね、どこか懐かしい雰囲気が漂っています。
そんな往十里の代名詞ともいえるのが、「コプチャン横丁」の存在です。コプチャンとは牛の小腸のことで、プリプリとした食感と濃厚な脂の甘みが特徴のホルモン焼き。この横丁には、十数軒ものコプチャン専門店がずらりと並び、夕方になると、香ばしい煙と活気のある呼び込みの声が通りにあふれ出します。
私が初めてこのコプチャン横丁を訪れた時の興奮は、今でも鮮明に覚えています。どのお店に入ろうか迷いながら歩いていると、各店の前でアジュンマたちが手際よくホルモンを炒めていて、そのシズル感に食欲をそそられます。ようやく一軒のお店に決めて入ると、店内は仕事帰りの会社員グループやカップルで満席。テーブルの鉄板でジュージューと焼かれるコプチャンは、ニラや玉ねぎと一緒に炒められ、その香ばしい匂いだけでビールが飲めてしまいそうでした。焼きあがったコプチャンは、外はカリッと、中はジューシー。噛むほどに旨味のある脂がじゅわっと溶け出し、まさに絶品。この味を求めて、人々がこの場所に集まってくる理由がよく分かりました。
そして、コプチャン焼きの締めくさいは、なんといっても「ポックンパ(焼き飯)」です。ホルモンの旨味が残った鉄板の上で、ご飯とキムチ、韓国のりなどを炒めて作るポックンパは、お腹がいっぱいでも不思議と食べられてしまう、悪魔的な美味しさ。これを食べずして、コプチャンを語ることはできません。
往十里を訪れるなら、ぜひお腹を空かせて、夕方以降の時間帯に行ってみてください。服に匂いがつくのは必至なので、少しラフな服装で行くのがおすすめです。地元の人々と肩を寄せ合いながら、熱々のホルモンと焼酎を囲む。これぞ、ソウルのディープな夜の楽しみ方です。
ホルモンでパワーを充電した後は、もう少し若々しいエネルギーに満ちた、学生たちの街へと足を延ばしてみましょう。
学生に愛される安くて旨い店が多い新村エリア
弘大(ホンデ)のすぐお隣に位置しながら、また少し違った雰囲気を放つのが新村(シンチョン)エリアです。ここには、韓国屈指の名門である延世(ヨンセ)大学や、名門女子大の梨花(イファ)女子大学などがキャンパスを構えており、街全体がアカデミックで若々しい空気に包まれています。弘大が「トレンドとアートの街」なら、新村はより「学生生活の街」といった趣が強いかもしれません。
そんな学生街のグルメ事情を支えているのは、やはり「安くて、ボリュームがあって、美味しい」お店たち。学生たちが毎日でも通えるように、お財布に優しい価格設定でありながら、味にも妥協しない、コストパフォーマンス抜群の食堂が数多く存在します。彼らにとって、これらのお店は単なる食事の場ではなく、仲間と語らい、笑い合い、時には悩みを打ち明ける、青春の1ページを刻む大切な場所なのです。
新村を代表するグルメといえば、スタンディングで食べるドラム缶焼肉が有名です。お店の中には椅子がなく、ドラム缶をテーブル代わりに、立ったままカルビ(牛の骨付きあばら肉)を焼いて食べるというユニークなスタイル。メニューはカルビとドリンクのみ、という潔さ。甘めのタレに漬け込まれたカルビは柔らかく、ご飯が欲しくなる味ですが、この店にはご飯もキムチもありません。ひたすら肉と向き合う、ストイックな空間です。この非日常感が学生たちに受け、いつも若いエネルギーで満ちています。
私が新村で特に好きなのは、こうしたガッツリ系の焼肉だけではありません。鶏肉と野菜を甘辛いコチュジャンで炒めるタッカルビの老舗や、昔ながらの洋食を韓国風にアレンジした「キサシクタン(運転手食堂)」スタイルの店など、探せば探すほど魅力的なお店が見つかります。
新村を訪れる際の注意点は、大学の長期休暇中は少し閑散とすることがある点です。逆に言えば、その時期は普段行列のできる人気店にも入りやすいチャンスかもしれません。学生たちの活気を感じながら、彼らのソウルフードを味わう。それはまるで、自分の学生時代に戻ったかのような、懐かしくも温かい気持ちにさせてくれる体験となるでしょう。
さて、ソウルの様々なエリアを巡る旅も、いよいよ最後の目的地です。締めくくりは、食のワンダーランドとも呼ぶべき、あの場所にご案内します。
伝統市場の活気を楽しむ広蔵市場エリア
ソウルグルメの旅を締めくくるのに、これ以上ふさわしい場所はないかもしれません。100年以上の歴史を誇る、ソウルで最も古く、そして最も活気のある伝統市場の一つ「広蔵市場(クァンジャンシジャン)」。一歩足を踏み入れれば、そこはまさに食のテーマパーク。所狭しと並んだ屋台、威勢の良いお店の人々の呼び声、美味しそうな匂い、そして食事を楽しむ人々の笑顔。市場のエネルギーそのものが、最高のご馳走です。
広蔵市場の魅力は、なんといってもその場で手軽に楽しめるB級グルメの宝庫であること。市場の中央に伸びる「うまいもん横丁」には、数えきれないほどの屋台がひしめき合っています。ここの名物といえば、まずは「ピンデトック」。緑豆を石臼で挽いて作る、お好み焼きのようなチヂミです。目の前の鉄板で、たっぷりの油で揚げ焼きにされる様子は見るからに美味しそう。外はカリカリ、中はふんわりとした食感で、玉ねぎの入った醤油ダレにつけて食べると、香ばしさが口いっぱいに広がります。マッコリとの相性も抜群です。
そしてもう一つ、絶対に外せないのが「麻薬キンパ」。具材は人参とたくあんだけという、ごくシンプルなミニサイズの海苔巻きですが、特製のからし醤油につけて食べると、その名の通りやみつきになる美味しさ。なぜか次から次へと手が伸びてしまう、不思議な魅力を持っています。
この他にも、新鮮なレバーやセンマイ(牛の胃袋)と一緒にいただくユッケ、もちもちのスンデ(豚の腸詰め)、温かいスープが嬉しいトッポギなど、魅力的なグルメが目白押し。様々なお店をハシゴして、少しずつ色々な味をつまみ食いするのが、広蔵市場の最も楽しい歩き方です。
広蔵市場を訪れる際の注意点は、とにかく活気があって混雑していること。特に週末は、まっすぐ歩くのも大変なほどです。スリなどには十分注意し、荷物はコンパクトにまとめておきましょう。また、屋台では現金しか使えないお店も多いので、少額の現金を用意していくとスムーズです。
人々の熱気と美味しい匂いに包まれながら、ソウルの「食」の原点に触れる。広蔵市場での体験は、きっとあなたのソウル旅行の中でも、最も色鮮やかで忘れられない思い出の一つになることでしょう。
まとめ
この記事では、ソウルの地元民が日常的に通う、本当に美味しい食堂を「定番グルメ」と「穴場エリア」の2つの視点から16軒厳選してご紹介。厚切りサムギョプサルや滋味深いソルロンタン、乙支路の路地裏や広蔵市場の屋台まで、ガイドブックにはない本物の味を体験できます。さあ、このリストを手に、あなただけのディープなソウルグルメ旅行へ出かけましょう!
よくある質問
ソウル初心者です。まず絶対に食べておくべき地元グルメは何ですか?
まずはサムギョプサル専門店の味を体験してみてください。記事で紹介されているように、地元民が通う店では厚切りの生肉が主流で、冷凍肉とは全く違うジューシーな味わいを楽しめます。豚の首周りの肉「モクサル」も絶品なのでおすすめです。
一人旅でも気軽に入れるお店はありますか?
はい、たくさんあります。特に「ソルロンタン」や「チゲ専門店」は一人で食事をしている地元の方も多いので気兼ねなく入れます。オフィス街のランチの定番店や、手打ち麺が自慢の「カルグクス」の老舗なども一人旅にぴったりです。
よりディープでローカルな雰囲気を味わえるエリアはどこですか?
工具店の間に名店が隠れる「乙支路エリア」や、ホルモン焼きの煙と活気が充満する「往十里のコプチャン横丁」、そして食のワンダーランド「広蔵市場」は、地元の人々の熱気を肌で感じられる特におすすめのディープなエリアです。
人気店は混んでいますか?並ばずに入るコツはありますか?
はい、人気店は食事時に大変混雑します。特に平日のランチタイム(12時〜13時)は避けるのが賢明です。少し時間をずらして11時半頃や13時過ぎに訪れるか、夕食も早めの時間帯を狙うと、比較的スムーズに入れることが多いです。
友達とグループでわいわい楽しめる鍋料理は何がおすすめですか?
鶏一羽を丸ごと煮込む「タッカンマリ」や、ソーセージやラーメンが入ったジャンクな美味しさの「プデチゲ」は、グループで鍋を囲むのに最適です。少し特別な日なら、新鮮な魚介が満載の豪華な「ヘムルタン」も会話が弾むこと間違いなしです。
カンジャンケジャンを食べてみたいのですが、注意点はありますか?
カンジャンケジャンは鮮度が命なので、記事で紹介されているような信頼できる有名専門店を選ぶことが最も重要です。また、生のワタリガニを使った料理なので、ご自身の体調が良い時に食べるようにしましょう。価格が少し高めなので、ランチ定食で試すのも良い方法です。
広蔵市場で絶対食べるべきB級グルメは何ですか?
広蔵市場の二大名物といえば、緑豆のチヂミ「ピンデトック」と、からし醤油で食べる「麻薬キンパ」です。どちらも屋台で手軽に楽しめ、その場で調理されるライブ感も味わえます。マッコリを片手に、これらのB級グルメを味わうのが市場の醍醐味です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。ミニアルバムは、音楽だけでなく、写真やデザイン、封入特典を通してアーティストの物語を感じられる、まさに総合芸術です。私自身も初めて開封したときの高揚感を、今でも鮮明に覚えています。この記事が、K-POPという広くて奥深い世界に一歩踏み出すきっかけになれば何よりです。機会があれば、推し活をもっと楽しむ工夫や、韓国現地でしか味わえないK-POP体験についてもご紹介できたらと思っています。これからも、“旅するように音楽を楽しむ時間”をご一緒できれば嬉しいです。